2003年に娘が生まれ、その頃からこの世界は人類はいかにして始まったのか。その大元の起源に興味が湧いていった。生活と制作の拠点を自然豊かな場所に移したこともその要因と重なった。県境の山に挟まれた狭い空も夜は天の川が見え、昼はここを守護する鳶が空を舞う。そんな生活環境の中で次第に全ての事物、事象の境界を取り除いて、そしてそれらの名称を外してこの世界を見るようになった。つまり世界が一体となるように事象を捉えるのである。その全ての境界が外されていくと宇宙の根源からの距離と時間が失われて、そのものとの対峙が可能になる。2008年そんな流れの中で「スサノヲ顕現」は出来(しゅったい)した。それを機に魂の御魂からの伝言としての事象が作品を通して届き始めたのである。スサノヲ作品は2023年「顕神の夢」展で初公開となった。5会場の巡回展の中でも足利市立美術館ではこの作品を含めて7点の顕現作品を発表した。そしてこの展覧会の企画者である足利市立美術館次長の江尻潔氏の前回の個展テキストで称された「無筆の絵」。宇宙は真空であり、光は反射するものがない限りどこまでも「闇」となって通過し続ける。光はそれを受けるものとぶつかって初めて顕れる、、その中で己の意識を「支持体」として不可視の「光」を捉える(テキストより抜粋)。
用意したシナのパネルをこの列島日本の神霊のエネルギーを感光するために数週間は壁に配置する。そしてシナのパネルに光の帯を確認すると地塗りとしての絵の具を全面に塗り上げていく。江尻氏の表現にもある、ここに己の意識を乗せる、意乗る(祈る)、つまり依代の儀式である。そしてしばらくすると画面には図像が浮かび上がり向こうの世界からの顕現が始まる。今回はバチカン宮殿の壁画「最後の審判」が顕れた。「顕現 ヨハネの黙示録」と題した作品の中央にはキリストとマグダラのマリア、左画面全体には大天使ミカエルが控える。何体もの龍神が舞う中でキリストの背後に現れた誰もが知る存在。そこにはどんなメッセージが込められているのか、何を伝えようとしているのか。今、ここに顕れた神の審判の出来(しゅったい)の意味を読み解いていきたい。
三輪洸旗
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