top of page

宇宙との大調和

 

 

2008年6月、所在不明であった岡本天明氏の幻の作、三貴神像が隣町の知人である檀家の お寺に管理されているということを知った。早速、連絡をして拝観に伺うと、そのお堂の土地の持つ安定 した磁場にまずは驚いた、聞くと住職の父がこの土地の地層には水銀があるということで土地を安 定させる意味においてもここに御堂を建立したということだった。すぐに高野山を思い浮かべた理 由がそこにあった。高野山は丹生という地名で水銀と関わりがある場所でもある。そして御堂の中 心に立って三貴神像と初対面となった。圧倒的な熱量を放っていた。 そして帰宅した晩に久々に絵を描いてみようと、前から用意しておいたシナのパネルにブラックジ ェッソと砥の粉を混ぜた地塗り剤で表面を塗った。今日はとりえずここまでとし、明日、その続き を行うつもりで床に就いた。しかしどうにも身体が熱く、寝られる状態でなかったので、シナのパ ネルの地塗りの乾き具合を見に行くと、その表面には青白く発光する何かが見えた。近づいて見る とそこには龍に乗ったスサノヲが顕れていた。それはまさしく、その日観た三貴神像のスサノヲだ った。あれから15年、自分にとっては御神体という位置付けでこれを発表しようとは心にも思って いなかったのだが、足利市美術館次長である江尻潔氏とご縁が繋がり、顕神の夢展(全国5カ所 巡回)に出展することになった。 スサノヲ顕現作品の反響は小さくはなかった。この展覧会をきっかけに制作スタイルが大きく移行を始め た。主体的に何かを表現をするのではなく、追わない、描かない、求めない、全ては向こうの世界 に委ねる。その土地と向き合い、自然と向き合い、その中から便りを受け取る場づくりが自分の制 作の軸となった。常に宇宙と同期した 状態であること。宇宙との大調和。地塗りの段階で直に手で伸ばされたパネル上には次々と顕 現の出来(しゅったい)。きっかけとなったスサノヲ作品は今も顕現を続けている。

スサノヲ顕現 HP_edited.jpg
bottom of page